人間工学に関するモデル5選

wakataemi

こんにちは。お正月を返上しないと卒業研究が終わりそうにないエミリーです。

以前、人間工学について書かせていただいた記事のなかで、人間工学は 「身体系」 「認知系」 「組織系」 の3つの要素から成るというお話をしました。本日はさらに掘り下げ、ユーザの認知行動について理解したりシステムの方針を決定する際に役立つ代表的なモデルをご紹介します。

1.メンタルモデル ―Norman,1986

mental model

メンタルモデルとは、人があるタスクを実行する際に頭の中に構築する作業モデルのことです。

人は新しい情報が入ってくると、頭の中で作り出されたメンタルモデルと現実世界を照合させて物事を理解しています。初めて操作する機器でも、ユーザのメンタルモデルと設計者のメンタルモデルが一致していれば、ユーザはその機器をある程度操作することができます。しかし、ユーザの頭の中にメンタルモデルが備わっていなかったり、対象機器がユーザのメンタルモデルに反した構造をしていたりすると操作することができません。

このように、メンタルモデルはその人の知識や経験に依存します。したがって設計者はユーザがメンタルモデルの再構築を繰り返さなくていいように想定ユーザのメンタルモデルを把握し、それに対応したデザインをすることが求められます。

2.淵モデル(行為の7段階モデル) ―Norman,1986

gulf model

ノーマンは人間と機器のインタフェースを “淵(gulf)” によって表現しています。

人間が機器を使いたいと思っている事柄は人間側の心理的世界にあり、実際に機器を使って行うタスクは機器側の物理的世界にあります。さらに心理的世界と物理的世界の間には2つの方向性の異なる淵が存在し、ノーマンはこの2つの淵の橋渡しをするのがインタフェースであると述べています。

私たちはインタフェースを設計をする際、この2つの淵の橋渡し(インタフェース)をいかにやさしくするのか考えなければなりません。自分の目標をどう実現すれば良いのかわからない実行の淵に対してはマニュアルを作成するなどし、自分の行ったことが意図と適合しているのかわからない評価の淵に対しては操作後にフィードバックを与えるなどして、心理的世界と物理的世界の間の淵をできる限り狭めることが大切です。

3.SRKモデル(認知的階層モデル) ―Rasmussen,1986

ラスムッセンはユーザのパフォーマンスレベルを3つの階層に分類しました。

①技能(Skill)ベース
かなり操作が自動化されている段階で、ある操作の後に次の操作に移る前の操作が完了したという情報(シグナル)を利用しています。

②規則(Rule)ベース
各操作のステップを遂一確認しながら行う段階で、このとき利用している情報(サイン)は必要な情報を抽出しながら行う必要があります。

③知識(Knowledge)ベース
どのように操作を行えばいいか分からない段階で、このとき利用している情報(シンボル)より、こうすればいいのではないかというレベルで操作を行います。

知識ベースの行動にはメンタルモデルが関与しています。熟達者は自分の経験に基づいて適切なメンタルモデルを構築できますが、初心者はうまくメンタルモデルを構築することができません。知識ベースは頭の中でメンタルモデルを作り、それにしたがって行動することから 「モデル駆動型」 とも呼ばれます。それに対して規則ベースは 「ルール駆動型」 、技能ベースは 「データ駆動型」 と呼ばれています。
インタフェースの設計では、想定ユーザがどのレベルで機器を利用するのか考慮する必要があります。

4.情報処理モデル ―Cardら,1983

information processing model

カードらは情報処理過程として、知覚プロセッサ、認知プロセッサ、運動プロセッサの3段階を設定しました。各プロセッサの処理に要する時間(周期時間)は、おおよそ100ms、70ms、70msであるとされています。これらの典型値から単純な意思決定と比較照合判断の所要時間を決定できます。

たとえば、Web上から 「京都」 の文字を探していて 「きょうと」 の文字を見つけた場合、それを別のものだと判断すればその反応は物理的照合となり所要時間は310msになります。逆に 「京都」 と 「きょうと」 を同一のものだと判断するとそれは名称照合となり所要時間は380msになります。

このようにマニュアルや何らかの表示を見る際、表現や文字が異なっていてことがあります。それを同一のものなのか確認するためには時間がかかり、認知的負荷を生んでしまいます。そして、人によっては文字の表現が異なることによってそれが同一のものであると気付くことすらできません。
インタフェースの問題として考慮しなければならないことは、人間に機器を利用するうえでどの程度の情報処理をさせるのかということです。

5.スイスチーズモデル ―Reason,1990

cheese model

リーズンのスイスチーズモデルは、リスク管理に関する概念の一つです。
スライスされたそれぞれのチーズは行われているタスクの状態を示しています。そして、4つのチーズの穴がぴったりと整列した場合にのみ事故が起こり得ます。機器に多くの障害やエラーがあったとしても、それらがきっちりと整列して起こらない限り事故にはつながりません。通常、事故の原因は一つではないのです。

スイスチーズのメタファは、事故を減らすためのいくつかの方法を示唆しています。

①チーズのスライスをさらに加える。
②穴の数を減らす、または既にある穴をより小さくする。
③いくつかの穴が整列した場合には、人間のオペレータに警告する。

これらは確認タスクを増やしたり各タスクの精度を上げることによって実現できます。

まとめ

認知系を中心に5つのモデルを紹介しました。さまざまなインタフェース設計に役立つモデルばかりですので、ぜひ活用してみてください。

最後に私事で恐縮ですが、このたび小僧ハウスを卒業することになりました。この投稿が最後になってしまいますが、私の拙い記事をいつも温かい目で読んでくださった方々に心から感謝いたします。
近々、新しい住人が入居予定? ですのでお楽しみに!!

引き続き小僧ハウスをよろしくお願いいたします。

インフォバーンKYOTOと言えば!ベスト5

wakataemi

こんにちは。インフォバーンKYOTOに入社して早一年が経ちました、エミリーです。
濃厚な時間を過ごさせていただいているためか、まだ一年しか経っていないんだなあというのが率直な感想です。

入社して間もない頃は、初めて足を踏み入れたWeb業界、そしてオフィス環境だったこともあり、毎日が驚きと感動の連続でした。本日はそんな一年前のフレッシュだった気持ちに立ち戻り、私から見たインフォバーンKYOTOについて、ランキング形式で書かせていただきます。

ベスト5:京都・季節を感じられる

jidai festival

インフォバーンKYOTOは、御池通りに面したビルの10階にオフィスを構えています。一面ガラス張りのオフィス内はいつも明るく、快適なオフィス空間で働かせていだたいています。さらに数か月前の席替え以降、アルバイト席は窓際になったので、日が短くなったり御池通りの脇木が赤く色づいてきたりなど、季節のちょっとした変化にも気づけてとても楽しいです。

また先月22日には、時代行列の鑑賞をすることができました。この日は京都三大祭のひとつである時代祭が京都平安神宮で行われており、御池通りはその巡行コースにあたっていたため、休憩時間にその模様を見ることができたのです。終始流れてくる独特のBGMと馬の鳴き声(多分録音)を聞きながらのデスクワークも格別でした。

ベスト4:愉快で陽気でアットホーム

何と言っても支社長である井登さんが最も愉快です(笑)京都支社の明るい社風は井登さんあってこそだと思います。また全員が常に顔を合わせられる規模感と密接なコミュニケーションもその要因になっているのかもしれません。

……が、これといったエピソードがないため以上です。

ベスト3:情強集団

教えてもらったリラックス法をみんなで実践中

教えてもらったリラックス法をみんなで試しているところです

情強集団。私が最もこう感じるのは、御池シンポジウムです。インフォバーンKYOTOでは、週に一度「個々が抱えている案件」と「最近の関心事や出来事」について、社員同士で報告し合う情報交換の場が設けられています。それが御池シンポジウムです。現在私は出勤曜日の関係上、参加する機会はなくなっていまったのですが、毎週30分~1時間程度で開催されています。

少し前まで、私も毎週のように御池シンポジウムに参加していました。社員さんが提供してくださる話題は、仕事に関するメディアの話から始まり京都のおいしいお店やイベント情報に至るまでさまざまです。しかし私はそれらの話に全くついていくことができず、いつも聞き役に徹していました。そんな中でも他の社員さんの食いつきはよく、毎回あらゆる方向に話が展開されていました。私はこれが学生と社会人のコミュニケーション能力の違いなのかとただただ圧倒されていました。

インフォバーンKYOTOのみなさんは、揃って多くの引き出しを持っておられます。常に最新の情報をキャッチしておかなければならない業界だからということも大きいのかもしれませんが、興味や知識の幅、深さは、本当に見習いたいものです。

ベスト2:横文字が飛び交うオフィス

これがグローバル社会?! 入社当時、私はそんなことまで思っていました(笑)オフィス内で使われている言葉はもちろん日本語ですが、聞きなれない横文字(カタカナ語)で構成される会話の数々に、衝撃を受けずにはいられませんでした。英語が苦手な私には、もはや単なる英単語なのか業界用語なのかすらわからない始末で、こっそりわからない単語をメモしては意味を調べていたのを覚えています。

IBK Best 5

これは私がインフォバーンKYOTOでお世話になるまで知らなかった業界用語の一例です。Web業界で働いている方にとっては日常的に使用している単語ばかりで、逆に日本語で表現することの方が難しいのかもしれません。しかし、私が社内で初めて「ローンチ」という単語を聞いたときは、打ち上げる? ん? 何を?...本当にこんな状態でした(笑)一年経った今、ようやく社員さん同士の会話がすんなり入ってくるようになりホッとしています。

ベスト1:御池+芝生=おしゃれ

balance ball

インフォバーンKYOTOと言えば! やはりおしゃれです。働く人もオフィス環境も、とにかくみんなおしゃれなんです。御池という立地、10階にある開放的なオフィス、芝生の上で行われるミーティング、時にはバランスボールに乗っておられる社員さんまでいたり。

会議室は貴船、定例ミーティングは御池シンポジウムという愛称で親しまれ、このようなおしゃれな響きや慣れない環境を一年経った今でもとても新鮮に感じています。

このブログ内で名乗っているエミリーという愛称もある社員さんに付けていただきました。最初の頃はなかなかピンとこなかったものの、今ではとても気に入っています!

まとめ

どうでしたか? あくまで主観的なランキングですが、少しでもインフォバーンKYOTOの雰囲気を知っていただけたなら嬉しいです。長々と書いててなんですが、結局どれも1位の “おしゃれ” に収束されそうですね(笑)

以上、エミリーから見たインフォバーンKYOTOベスト5でした!

IDEOジェーン・フルトン・スーリ氏による公開講義
“Design Inspired by Life”参加レポート・後編

shinomiyayuki

こんにちは。シノミーです。

前回に引き続き、2015年6月20日に行われた京都工芸繊維大学KYOTO Design Lab主催のIDEOジェーンフルトンスーリ氏公開講義“Design Inspired by Life”のレポートをお届けします。

前編はこちら

講義概要“Design Inspired by Life”

講義の流れは
・(はじめに、生命中心設計について)
・LCD① 生命と共存するデザイン
・LCD② 結果を作り出す状態を生み出すデザイン
・LCD③ 相互に価値を生み出すデザイン
・LCD④ 文脈に合致したデザイン
となっており、全体を通してLCD(Life Centered Design,生命中心設計)という新しい概念がテーマでした。

その中で今回は、後半部分の
・LCD③ 相互に価値を生み出すデザイン
・LCD④ 文脈に合致したデザイン
についてレポートしていきます。

LCD③ 相互に価値を生み出すデザイン

この章では「相互に価値を生み出すデザイン」また「システム全体に広く価値をもたらすデザイン」についてのお話をしていただきました。通常、デザインとは、特定の環境で特定のクライアントを満足させるためのサービスやモノを対象としてなされるものですが、ここでは考え方を変えて、関連するすべての要素に恩恵をもたらすようなデザインを考えてみようということをおっしゃっていました。

例:ヤドリギ
木に寄生して養分を吸うだけの植物だと思われているが、実はヤドリギの種が好物である鳥達が宿主の木に多く集まり、一緒に宿主の種や果実を食べるため、宿主も種が各所にばらまかれ繁栄することができる。

Mistletoe

→ここから着想を得て、一見競合して見えるが相互利益をもたらすようにするアプローチ
(例:Amazon。Amazonは小さな古書店・専門書店と競合している側面もあるが、それらの書店にAmazonのプラットフォームを通じてグローバルレベルの販路を提供している。)

例②:自然界での樹木のリサイクル
樹木はその300年ほどの寿命のうち、最初の100年を成長にあて、次の100年で成熟した生を生き、最後の100年で朽ち果てながら森のエコシステム全体に栄養などを還元していく。

Sunlight breaking through misty forest

→ここから着想を得て、エコシステム全体に利益をもたらすようにデザインするアプローチ
(例:テスラのEV特許無料公開。競合を含めた電気自動車産業全体に特許を公開することで、産業のインフラや周辺製品を含めたエコシステム全体としての成熟を促し、全体に利益をもたらすことが出来る。)

まとめ
・見方を変えて、相互利益を得られるような考え方をする。
・デザイナーとしてクライアントに相互利益をもたらすようなデザインを提案しよう。

LCD④ 文脈に合致したデザイン

そして最後にスーリ氏が紹介して下さったのは「文脈に合致したデザイン」です。これは、生物学者のダーウィンが発見した島ごとにくちばしの形が異なるフィンチのように、周囲の条件・環境に適合するデザインという意味だそうです。

例:ボブテイルスクイッド
夜間の食事中外敵に見つからないように、その時の月光の強さと同じ強さの光を体から発して姿を隠す。

Bobtail Squid

→ここから着想を得て、環境の中に溶け込ませる・フィットさせるアプローチ
(例:”solar ivy”というツタの葉のような太陽電池。旧来の太陽電池の、周囲の風景や環境に合わない・製造過程がエコでない・システムの一部が破損すると全体が動かなくなるといった問題点を克服)

まとめ
・個別に完結したデザインでなく、幅広い文脈に適合したデザインをする。
・システム全体に含まれる要素の関係性を理解し、それをデザインによって表現する・生かす。

全体のまとめ

最後にスーリ氏は、デザイナーがLCDを行うに当たって気をつけることを、これまでの項目と対応させて4つ紹介してくださりました。
・自然界の流れに自分たちのプロセスを沿わせて、他の生命からも学びヒントを貰う。
・トップダウンで解決策を与えるのではなくて、解決策が生まれてくるような条件状態を設定する。
・自分が与えられた問題だけを解決するのではなく、より幅広い価値が提供されるようなソリューションを作り出す。
・幅広いコンテクストで機能しうるデザインをする

以上のアドバイスを最後に講義は終了しました。(この後30分ほどの質問セッションが設けられていました。)

所感

LCDという、HCDをさらに拡大した考え方が非常に斬新で興味深く感じました。しかしLCDの4つの観点はどれも抽象的&状況が限定的なので、LCDの概念をベースにデザインを行っていくのは当然ながらなかなか困難なように思われます。とは言っても、LCDの中にある、持続可能性の高いプロダクト・サービスをデザインするための考え方や、自然界からデザインのインスピレーションを得るという発想は広く活用できるものかもしれません。

また講義を通じて、スーリ氏が短期的な利益だけでなく、長期的な産業全体の持続可能性、さらに場合によっては地球環境問題に関連するような何十年・何百年先での持続可能性ことも考慮にいれつつ、デザインという概念を再構築しようとしているように感じました。これは究極的にはデザインの理想型の1つなのかなと、個人的に感じました。

以上講義のレポートでした。

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IDEOジェーン・フルトン・スーリ氏による公開講義
“Design Inspired by Life”参加レポート・前編

shinomiyayuki

こんにちは。シノミーです。

だいぶ時間が経ってしまいましたが、2015年6月20日に行われた京都工芸繊維大学KYOTO Design Lab主催のIDEOジェーンフルトンスーリ氏の公開講義“Design Inspired by Life”に参加してきましたので、そのレポートを公開します。

後編はこちら

ジェーン・フルトン・スーリ氏とは?

ご存知の方も多いと思いますが、はじめにジェーン・フルトン・スーリ氏について少し紹介します。ジェーン・フルトン・スーリ氏は、高名なデザインファームIDEOのCCO(Chief Creative Officer)であり、人間観察や人間中心設計(Human Centered Design、以下HCD)などのIDEOの代名詞的なアプローチの構築を社内で牽引されてきた方です。主な著作には「Thoughtless Acts」(邦題:考えなしの行動?)があります。

講義レポート“Design Inspired by Life”

この公開講義は京都工芸繊維大学の教室にて行われました。参加者は目視ですが100人弱、IT系の仕事をしている社会人の方から違う大学の大学生まで幅広い層の方が参加されていました。講義は英語で行われたのですが、スーリ氏の話を逐次通訳していくという形で行われていたため、英語があまり得意でない私も講義の内容を十分に理解することできました。講義の概要は以下のとおりです。

・はじめに、生命中心設計について
・LCD① 生命と共存するデザイン
・LCD② 結果を作り出す状態を生み出すデザイン
・LCD③ 相互に価値を生み出すデザイン
・LCD④ 文脈に合致したデザイン

各パートごとに印象に残った内容を紹介していきます。

はじめに、HCDとLCDについて

スーリ氏の講義は、アインシュタインのある言葉の引用からスタートしました。
“A human being is part of a whole, called by us the ‘Universe’ —a part limited in time and space〜”
これは「人間は自然の小さな一部にすぎない」という意味の発言であり、今回の講義ではこの観点から生命中心設計(Life Centered Design、以下LCD)について考えてみるということでした。
このLCDが、IDEOの代表的な手法であるHCDと違う点は、「人間」でなはく「(エコシステムとしての)生命全体」をデザインやインスピレーションの対象とする点です。従来IDEOではHCDという観点から、人の行動を観察しそこから着想を得てサービスや製品を改善するというアプローチをとってきました。しかし今日、デザイナーが解決すべき問題はますます複雑になってきており、政治・経済・環境など様々な観点から問題を捉え、「システム」としてデザインを行う必要が出てきています。そんな中で「人間」ではなく「生命全体」からインスピレーションを考える必要性がでてきているとのことでした。

このような文脈の中でLCDについて、4つの観点からお話をしていただきました。

LCD① 生命と共存するデザイン

まず一つ目は「生命と共存するデザイン」についてです。スーリ氏によると、この百年の間、人類の技術は「ヒトVS自然」という考え方の中で発展を続け、それはさながら「人間が自然をコントロールする」ようなものだったそうです。しかし実際は、ポリオワクチンの開発者の「人間は昆虫が居ないと滅ぶ、しかし人間がいなくなると他の生命が栄える。」という言葉に現れているように人間は自然の中で他の生命に依存して生きているため、自然を「支配」するのではなく自然と「共存」するようなアプローチが必要だと仰っていました。ここで講義中に取り上げられていた具体例を紹介します。

例:ハキリアリ
葉っぱを食べるのではなく、葉っぱを使って菌類(キノコ)を育てその胞子から栄養を得る。
ideo_jane_001

→ここから着想を得て人間の体についている微生物を「殺す」のではなく「育てる」というアプローチ
(例:個人の体についている微生物を取って培養し、その人に合った石鹸やクリームを作る)
→細菌類からヒントを得て、ものの作り方・プロセスそのものを再構築するアプローチ
(例:光に反応して特定の形状に変化する細菌類を利用して、カップそのものがプロバイオティクスでできたコップを作る。「体に良い飲み物を作って、ボトリングして…」というプロセスではなく、「コップに水を注げば体に良い飲み物になる」という新たなプロセスを形成)

まとめ
・自然のプロセスに逆らわず活用させてもらうことが重要。
・そのためには、自然の仕事を観察し自然と共存するやり方でいろいろ試す。

LCD② 結果を作り出す状態を生み出すデザイン

次にご紹介いただいたのは「結果を作り出す状態を生み出すデザイン」です。これは「結果そのもの」をデザインするのではなく、結果に至るような・生まれるような状態をデザインするという考え方です。

例:ビーバー
ビ−バーがとある川に巣を作ると、川の環境が変化し生物多様性が30%増した。
ideo_jane_002
→ここから着想を得て目指すべき結果に至る「環境」を作り出すというアプローチ
(例:2,30代の保険に関心が無い人を惹きつけるためにカフェのようなスペースを作り、その人達が惹きつけられるような環境を作り出したある保険会社)

例②:シロアリの塚
トップダウンで意図的に設計されたものではなく、一匹ずつのアリがシンプルなルールに従って行動した結果生まれた構造物。優れた環境適応性を持つ。
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→ここから着想を得てシンプルなルールを活かすことで望んだ結果を生み出すアプローチ
(例:ドライバーが左に曲がるだけで機能するラウンドアバウト。状況適応力がある。⇔信号もシンプルなルールだが、誰も居なくても信号が赤だと止まらなければいけないなど状況適応力が低い。)
ideo_jane_004

まとめ
・特定のものをデザインせず、結果が自ずと生まれてくるような状態をデザインする。
・そのためには特定の文脈で起こっている変化とその変化がもたらす全体への影響を観察する必要がある。そしてその中で特定の結果を発生させるために必要なルールを考えてみる。

以上が講義の前半部分でした。残りの2トピックと講義の所感は次回の記事で公開したいと思います。

 

Photo by Thinkstock/Getty Images

意外と知られていない“テクニカルコミュニケーション”

wakataemi

初回投稿から随分と時間が経ってしまいましたが、本日はエミリーがお届けします。

はじめに

TC book introduction
先日、大学で上図の本を借りました。貸出用にしては年季が入っていなかったという不純な動機です(笑)しかし読んでみると、大学で学んでいることやインフォバーンでのお仕事との交錯点が多く、とても興味深い内容だったので、この場を借りて紹介させていただきます。

テクニカルコミュニケーションについて

みなさんは、テクニカルコミュニケーション(以下TCと表記する)という言葉を聞いたことがありますか? その名前から、TCが「技術的な情報伝達手段」や「情報伝達における専門分野」であることはなんとなく想像できるかと思います。私もこの本を読むまでは、マニュアル制作や翻訳に携わる人たちが持っている知識や技術なのだろうという漠然としたイメージを持っていました。

TCとは、さまざまな形式のメディアを介してターゲットとするユーザーに向け、技術プロセスや製品についての情報を作成、提供する分野のことを言います。この定義からすれば、私たちの持っている先入観もまんざら間違ってはいないように思えます。
TC component
しかし、本書で紹介されていた「米国のTCを専攻できる大学の開講科目(教育)」と「日本のTC協会の活動に参画している人たちの属性(職域)」という2つの観点から、TCの領域についてまとめてみると「TC=文書作成に特化した専門領域」という私の認識は、かなり限定的だったことが分かります。

そこで今回は、TCの技術が実際にどのような場面で活用されているのか見ていきたいと思います。

ユーザーインターフェースの3つの側面

本題に入る前に、ユーザーインタフェース(以下、UIと表記する)について少し触れておきます。
UI component
UIには、感情的・操作的・技術的の3つの側面があります。技術的側面の進歩に伴い、感情的側面と操作的側面は飛躍的に向上してきました。感情的側面と操作的側面の関係について、筆者は次のように述べています。

“ 一定のレベルまでなら、UIの「面白さ」がユーザーの動機付けになり、その動機付けを「わかりやすさ」が受けるという図式が成り立つ。仮に、実際に操作すれば分かりやすく作り込んであっても、一見退屈なUIならば、ユーザーは使う前から心理的障壁を持ち、「面白くない=わかりにくい」と思ってしまうこともある。そういったユーザーを「わかりやすさ」に導くきっかけとしての「面白さ」は評価できる。(中略)ところが、技術を駆使して不必要に「面白さ」を出しすぎた場合、逆に「わかりやすさ」は阻害される。”

この「面白さ」と「わかりやすさ」の重み付けには、私自身いつも難しいと感じているところです。本書でも述べられていましたが、その検討は、ユーザーの行動における対象商品の役割を考慮することに尽きると思います。例えば、マニュアルを読んだり辞書を引いたりという行為は、目的ではなく手段です。同様に、ホームページやECサイトを閲覧するという行為も、ほとんどの場合が情報を得るための手段になります。

しかしながら、最近ではトップページが面白さや美しさだけを表現した動画ぺージになっているサイトをよく見かけます。誰もが一度は、そのトップページを煩わしく思い、「スキップ」ボタンを押したことがあるのではないでしょうか。これこそが感情的側面、技術的側面を出しすぎた結果、操作的側面が欠落してしまった典型例だと言えるでしょう。

デザインをする際には、テクノロジーの押し売りになっていないか、ユーザーはその機能やデザインを本当に求めているのかについて、もう一度検討することが大切なようです。

テクニカルコミュニケーターの役割

TC position
本書で述べられていることを自分なりの解釈で可視化すると、上図のようになりました。つまり、テクニカルコミュニケーターは、モノとヒトをつなぐ架け橋であると同時に、エンジニアとデザイナーをつなぐ役割も担っているということです。

技術者やデザイナーが先走りしすぎたときに、もう一度立ち止まって、UIを考えるところに呼び戻すこともテクニカルコミュニケーターの大切な役割です。技術者が道具をより便利にしようと努力し、デザイナーがユーザーにより楽しく使ってもらおうと考えていると、道具の行き過ぎた人間化やおもちゃ化に歯止めがかからなくなってしまいます。そこで、道具を純粋な道具として捉え、多方面から使いやすさを追及することのできるテクニカルコミュニケーターが必要になってくるのです。

道具の人間化とおもちゃ化

人間を一つのUIとして考えることができるとしたら、これほど有能なUIはないでしょう。筆者は、UIとしての人間のメリットを以下の3つに集約しています。
human UI
技術者にとっての永遠の夢は、人間を作ることだそうですが、もし仮に、上記3つの条件を満たす人工知能UIが実現できたとして、そこにデメリットはないのでしょうか。筆者は以下のことを懸念しています。

“ 知能を持ったUIではシステムがブラックボックス化し、ユーザーにとってはその中で何が起こっているのか見えない。これは、人工知能を引き合いに出すまでもなく、ワープロソフト程度でも既に実現されており、「いったいどうなってるんだ」という経験をしたユーザーは多いだろう。ノーマン(2000)も指摘するように、「どんなに難しくても、ユーザーがそれを自分で制御していると感じるとき、(中略)使いやすくなる」。UIが知性を持ちすぎてブラックボックス化した機器は、ユーザーにとって必ずしも使いやすいとは限らないのである。”

また、ここにデザイナーが介入してくると、人工知能UIに顔をかぶせ、音声で受け答えし、見た目もできる限り人間っぽくしようとします。人間に近づけば近づくほど不気味さが生まれ、さらにはユーザーはその人工知能UIに人間と同等レベルのコミュニケーション能力を求めるようになります。すると、ぶっきらぼうで感じが悪かったとか、好みの顔じゃない、などという人間としての評価を無意識のうちに下すようになるのです。

このような側面を見ると、技術の力を使って人間に近づけることが、必ずしもUIの向上になるとは言えないということが分かります。世間では、自動車の全自動化などの研究も進められていますが、そこには事故が起こったときの責任問題など、技術面以外でのさまざまな課題が残っています。すべてを技術の力に頼ることよりも、機械と人間で役割分担をすることの方が、システムとしての効率性を考える上では重要のようです。

まとめ

日本において、TCという言葉はまだまだ浸透しているとは言い難いですが、テクニカルコミュニケーターを名乗っている人は少なくても、技術者やデザイナーがその役割を兼任してる企業や専門家は、意外と多いのではないでしょうか。テクニカルコミュニケーターは、技術者やデザイナーなどの深い専門性をもった人たちが、幅を広げた派生形なのかもしれません。

今後、あらゆる専門家が細かく専門分化していくと予想されるなかで、TCの動向にも目が離せません。

新製品は誰に売ればヒットするのか
【イノベーター理論2】

shinomiyayuki

こんにちは。シノミーです。今回も僕の大学での学習テーマである【イノベーションマネジメント】について、学んできたことを紹介させていただきます。
>> 前回の記事はこちら

前回はイノベーター理論を用いて、「新製品の普及が進むにつれ、その製品を買う人が変わっていく」という話をご紹介しました。今回はそのイノベーター理論の中で「実際に新製品を売る際にどの層が一番重要か」つまり「新製品は誰に売ればヒットするか」ということを考えていこうと思います。

普及率16%の論理

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以前お伝えしたとおり、イノベーター理論では、新製品の普及が進むにつれ、その製品を買う人の特性が上図のように変化していくとされています。では今回は、このイノベーター理論の図と「各時点での製品の普及率」を合わせて考えてみましょう。
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上図はイノベーター理論の分布図にその時点での製品の普及率のグラフを重ねたものです。この図から、アーリーアダプターの層を超えた時点(約16%の普及率)から、製品が急速に普及していくことがわかると思います。これは次の購入層であるアーリーマジョリティが非常にボリュームの大きい層であることが原因です。つまりアーリーアダプターに製品を買ってもらうことは、その製品を広く普及させる上で非常に重要になってくるのです。

またアーリーアダプターが非常に重要である理由はもう1つあります。それはアーリーアダプターはいわば「自動広告塔」であるということです。一般に、「アーリーアダプターは、他の人々(特に次の購入層であるアーリーマジョリティ)に対して大きな影響力を持っていることが多い」とされています。これは、アーリーアダプターが①製品があまり普及していない早期の段階で、使用した感想を発信しはじめること、②いつも早い時期に製品を買うため、オピニオンリーダーとして注目されているような人が多く、意見の影響力が高いこと③より早期に製品を買うイノベーターに比べ人数が多く拡散力があること、が原因です。そのためアーリーアダプターに商品を届けて満足してもらうことができれば、彼らが勝手に広告塔となって商品を宣伝してくれるというわけです。

以上の2つの理由から新製品ヒットの鍵を握っているのはアーリーアダプターであると言えるでしょう。

ネット時代のアーリーアダプター

この理論は1960年代というインターネット未発達の時代に生まれたものであるため、ネット上で「(リアル世界において)周りに製品を持っている人がいなくても」製品の評判を確認できたり、それによって爆発的に製品が普及しうるような今の環境は考慮されていないと考えられます。しかしこのようなネットの時代においては、アーリーアダプターのような「早期に製品を買った人の影響力(拡散力)」はより強くなったと言えるのではないかと個人的には思います。新製品を売る際は、「現代のアーリーアダプター」を正確に特定し、彼らにフォーカスしたマーケティング施策を考えることが大事かもしれませんね。

キャズム理論

さて、ここまでロジャーズ教授のイノベーション理論に基いて「新製品を売る際にどの層が一番重要か」という話をしてまいりましたが、実は「ハイテク製品においては、アーリーアダプターとアーリーマジョリティの間に大きな溝(キャズム)が存在するため、アーリーアダプターに製品が売れてもそこからヒットしていかない」ということが別の経営学者によって指摘されています。
次回はこの点について詳しく紹介していきたいと思います。

デザイン人間工学って?

wakataemi

はじめまして。半年前にアルバイトとして入社した新しい見習い小僧、エミリーです。現在は京都の女子大学に通っています。どうぞ、よろしくお願いします。

今回は、私が所属するゼミと研究領域について紹介します。

はじめに

私はゼミで、デザイン(画面、サービス、UX)や人間工学を中心に、その周辺領域であるマーケティングや統計など、幅広い分野を学んでいます。また、個人研究として取り組んでいるのは、「デザイン人間工学」のフレームを用いた製品やサービスの分析・評価です。

そして私たちのゼミでは、研究成果を学会や研究報告会で積極的に発表しています。インフォバーンKYOTOとの出会いも、元をたどれば京都支社長がゼミの研究報告会に足を運んでくださったことがきっかけです。このありがたいご縁と環境に感謝して、これからもゼミとアルバイトと小僧ハウスと。全力で精進して参ります!

デザイン人間工学って?

前置きが長くなってしまいましたがここからが本題です。

そもそも「デザイン人間工学」とは何なのでしょうか。ここでいうデザインとは、造形を中核とした狭義のデザインではなく、1つのシステムやサービスとして考える広義のデザインを指しています。そして人間工学とは、人間とシステムの調和を考える科学的な学問です。その種類は、以下の身体系、認知系、組織系に分けられます。

aboutergonomics1

しかしながら、多くの人が「人間工学=身体系」「認知工学=認知系」というイメージを持っており、しばしば人間工学は古い学問だと認識されているようです。

人間工学はコンピュータが普及していない時代(1956年ごろ)から存在するため、身体系へのニーズが高かった時代の印象が強いのだと思います。しかし実際は「もの(物)」から「こと(情報)」へ、「使いやすさ」から「分かりやすさ」へという時代の流れにしたがって、人間工学が扱う領域も身体系から認知系へと、検討すべき領域のウエイトをシフトしてきています。したがって、人間工学は決して古い学問ではなく、むしろこれからますますニーズが高まると期待されているのです。

aboutergonomics2

そして今までは、デザインと人間工学は別々に考えられていましたが、ものづくりが複雑かつ高度になり、製品そのもののデザイン検討だけでは追いつかなくなってきました。ものづくりをシステム全体のしくみやサービスとして考えなければならない現在、人間工学の知見なしでデザインをすることはほぼ不可能なことだと言えるでしょう。

そこで人間工学をデザインの土台として位置付け、デザインと人間工学の領域を統合することによって、論理的にアプローチしていこうというのが「デザイン人間工学」なのです。

まとめ

私の拙い説明で恐縮ですが、「デザイン人間工学」の考え方について少しはご理解いただけたでしょうか。
次回以降は、人間工学に纏わる事例や豆知識の紹介と京都オフィスでの学びについて発信していきます。お楽しみに!

見習い小僧ブログリニューアル & 後輩小僧へのバトンタッチ!

見習い小僧

4月も中盤となり、やや時期を逃してしまった感のあるこのタイミングですが、小僧ブログについて2つ発表があります!

その1 初代・見習い小僧、引退。引き継ぎへ!

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小僧ブログは2011年の開設時、当時まだ新卒入社前のインターンだった私が、仕事で学んだことをブログとして残していこうということではじまりました。同時にインフォバーンKYOTOの情報を発信し、インフォバーンKYOTOに興味を持っていただいた方の参考になればと考え、これまで更新してきました(ここ最近はめっきり更新できていませんでしたが・・・)

早いもので、見習いとしてこのブログを始めてもうすぐ4年になります。いつまでも「見習い」と自称してもいられません。さらに、インフォバーンKYOTOにはたくさんの優秀な若手メンバーが入社してきてくれています。

そこで今回、小僧ブログの運営を3名の後輩に引き継ぐことにしました。

その2 『小僧ブログ』開設以来の大リニューアル!

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そして、ご覧いただけばおわかりいただけるかと思いますが、小僧ブログを引き継ぐにあたってブログのデザインとコンセプトを大幅にリニューアルいたしました!

リニューアル後のブログタイトルは『小僧ハウス』

小僧ハウスについて、まずはリニューアルしたブログの『ABOUT』から引用します。

小僧ハウスは、インフォバーンKYOTOで働く3人の見習い小僧達が、各自の目線から学んだことや感じたことをお伝えしていくブログです。Webに関する書籍の書評やイベントレポート、各自の興味分野(大学での専攻テーマ等)の中からWebの仕事に役立つことを中心にご紹介していきます。また、ときにはインフォバーンKYOTOの裏側などもご紹介していけたらと思っています。

引用:About KOZO HOUSE |

小僧たちが集うシェアハウス『小僧ハウス』には現在、さりー、しのみー、えみりーという3名の小僧が住んでいます。みんなインフォバーンKYOTOのインターンとして、既に様々な場面で活躍してくれています。

大学ではそれぞれ全く別のことを勉強している3名の住人たちは、これから小僧ハウスでどんな記事を更新してくれるのでしょうか?乞うご期待です。

これからも、時々見に来てくださいね〜

最後に・・・

最後に個人的な話で恐縮ですが、このたびインフォバーンを卒業することになりました。

前述のとおり、自分にとって小僧ブログは、勉強したことをひとつずつ残していく場所であり、いろんなことを学ぶ度に「これをどう伝えようか?」と整理するきっかけを与えてくれました。インターンの頃に立ち上げを任せてもらったので、自分にとっての初仕事とも言えるもので、非常に愛着があります。

今後は3名の後輩が、それぞれの知見を活かしたいろんな記事を更新してくれると思います。OBとして密かに楽しみにしつつ、もしかしたら時々この場にも顔を出すかもしれませんので、その時はどうぞよろしくお願いします。

最初にスマホを買ったのはどんな人達?
【イノベーター理論】

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みなさんはじめまして!リニューアルした小僧ハウスのライターになりました、インフォバーン京都アルバイトのシノミーです。初回の記事ということで、まず簡単に自己紹介させていただきます。私は京都在住の大学生で、大学では「イノベーションマネジメント」、つまり革新的な製品・サービスをいかに生み出し、いかに育てていくべきかということを学んでいます。当ブログではそのような大学での学習テーマから、みなさんの仕事に役立ちそうな理論・フレームワーク等を紹介していきたいと思います。よろしくお願いいたします。

イノベーター理論

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突然ですが、みなさんはスマートフォンをいつ頃からお使いですか?
僕は、3年ほど前のiPhone4Sが発売された時にスマホを使い始めたのですが、その時すでに周囲の約3分の1の人がスマホを使っていました。さて、なぜこのように人によってスマホを買うタイミングが変わってくるのでしょうか?一見当たり前のように思えるこの疑問ですが、実はスマホのような(少なくとも登場時には)革新的な製品を、いつ誰が買いはじめるかというのは、ある程度理論化されているのです。それがイノベーター理論です。

イノベーター理論とは、1962年にオハイオ州立大学(論文発表当時)のエベレット・M・ロジャース教授が提唱した、革新的な新製品の普及についての理論です。彼はこの理論の中で、ある新商品を購入する人々は、購入の早い順に「5つのクラスタ」に分類できると主張しました。
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【イノベーター】 人口比2.5%
まずはじめに新製品を買う人々。冒険的。技術思考が強く、目新しさ、革新性を求めて商品を買う。
【アーリーアダプター】 人口比13.5%
流行に敏感で、情報収集を自ら行い、判断する人々。自分にとってその商品が役に立つかを自ら考え、購入に踏み切る。周りに使っている人がいるかどうかは気にしない。
【アーリーマジョリティ】 人口比34.0%
新しい様式の採用に比較的慎重な人々。確かな実用性を重視するため、先行事例を気にする。
【レイトマジョリティ】 人口比34.0%
比較的懐疑的な人々。その製品を周囲の大多数が使用していて、持っていないと不便を感じるようになると商品の購買を決意する。
【ラガード】 人口比16.0%
保守的な人々。新商品が伝統・常識といえるレベルで定着して初めて商品を買う。もしくは永久に買わない。

スマートフォンにおけるイノベーター理論

では、先ほどのスマートフォンの例に戻って考えてみます。
【イノベーター】 人口比2.5%
スマートフォンが登場。まわりに使っている人がおらず、本当に便利か確証が持てないが、斬新で面白そうなので購入。
【アーリーアダプター】 人口比13.5%
聞くところによると、スマートフォンというものがギークの間ではやっているらしい。周りに持っている人はいないが、インターネットで情報を収集して自分なりに検討したところ、どうやらこれはうまく使えば役に立ちそうだ。購入を決意。
【アーリーマジョリティ】 人口比34.0%
周囲にポツポツスマートフォン使っている人が現れてくる。彼らに話を聞くと、どうやら結構便利らしい。周りの評判もいいし、確かに便利なのだろう。購入を決意。
【レイトマジョリティ】 人口比34.0%
気がつけば周囲の人は半分以上スマートフォンを持っている。望んでスマートフォンを買いたいわけではないが、持っていないと周囲との連絡がとりにくく、生活に支障をきたすようになってきた。購入を決意。
【ラガード】 人口比16.0%
周りの人はほぼスマートフォンを持っている。が新しいものを使う気にはならない。買わない。

とこのような感じになると思います。この理論に基づいて考えると、周囲の人の3分の1くらいがスマホを使いはじめたタイミングでiPhone4Sを買った僕は、アーリーマジョリティということになりますね。

もちろん厳密にはこのようにきれいに分かれるわけではなく、製品の特性によってクラスタの分布や性質も少しずつ異なってくると思います。しかしこの理論と現在の製品の普及率などを組み合わせて使えば、次に商品を買うのはどんな人達かをざっくりと推測することができると思います。なのでwebを利用したマーケティング戦略を考える際も、売りたい製品・サービスが今どの程度普及しているかということも少し考えてみるのも面白いかもしれませんね。

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あけましておめでとうございます。2015年のインフォバーンKYOTOは・・・

見習い小僧

あけましておめでとうございます。そして小僧ブログの更新がご無沙汰どころの騒ぎではなくなってしまいました(汗)

さて、本日は2015年初めての出社日ということで、全員で(今日来ていない業務委託やアルバイトの3名を除く)初詣に行ってきました。オフィスから徒歩3分のところにある御所八幡宮さんでのお参りは、支社開設以来毎年の恒例行事となりましたが、今年は初の全員正装。ピシっとキメてきました!

今年もインフォバーンKYOTOは、ウェブやコンテンツ、UXコンサルティングといった領域で、関西を中心とした幅広いお客様のお役に立てるよう、精進していきます。なにかご入用の際には、ご遠慮なくお問い合わせください。

> 株式会社インフォバーンへのお問い合わせ

また、一緒に働いてくれるメンバーも引き続き募集中です。

上記各ポジションで募集をしていますので、ピンとくる方はご連絡ください。

 

小僧ブログリニューアル予告

そして、小僧ブログのリニューアル計画をこっそり進めています。

そう遠くない未来にプチリニューアル&体制変更をしますので、もう少し更新頻度の高いブログに出来るかと思います。リニューアルが完了しましたら、また時々見に来ていただけましたら幸いです。

それではまた!