新製品は誰に売ればヒットするのか
【イノベーター理論2】

shinomiyayuki

こんにちは。シノミーです。今回も僕の大学での学習テーマである【イノベーションマネジメント】について、学んできたことを紹介させていただきます。
>> 前回の記事はこちら

前回はイノベーター理論を用いて、「新製品の普及が進むにつれ、その製品を買う人が変わっていく」という話をご紹介しました。今回はそのイノベーター理論の中で「実際に新製品を売る際にどの層が一番重要か」つまり「新製品は誰に売ればヒットするか」ということを考えていこうと思います。

普及率16%の論理

diffusion_of_innovations_002
以前お伝えしたとおり、イノベーター理論では、新製品の普及が進むにつれ、その製品を買う人の特性が上図のように変化していくとされています。では今回は、このイノベーター理論の図と「各時点での製品の普及率」を合わせて考えてみましょう。
diffusion_of_innovations_003
上図はイノベーター理論の分布図にその時点での製品の普及率のグラフを重ねたものです。この図から、アーリーアダプターの層を超えた時点(約16%の普及率)から、製品が急速に普及していくことがわかると思います。これは次の購入層であるアーリーマジョリティが非常にボリュームの大きい層であることが原因です。つまりアーリーアダプターに製品を買ってもらうことは、その製品を広く普及させる上で非常に重要になってくるのです。

またアーリーアダプターが非常に重要である理由はもう1つあります。それはアーリーアダプターはいわば「自動広告塔」であるということです。一般に、「アーリーアダプターは、他の人々(特に次の購入層であるアーリーマジョリティ)に対して大きな影響力を持っていることが多い」とされています。これは、アーリーアダプターが①製品があまり普及していない早期の段階で、使用した感想を発信しはじめること、②いつも早い時期に製品を買うため、オピニオンリーダーとして注目されているような人が多く、意見の影響力が高いこと③より早期に製品を買うイノベーターに比べ人数が多く拡散力があること、が原因です。そのためアーリーアダプターに商品を届けて満足してもらうことができれば、彼らが勝手に広告塔となって商品を宣伝してくれるというわけです。

以上の2つの理由から新製品ヒットの鍵を握っているのはアーリーアダプターであると言えるでしょう。

ネット時代のアーリーアダプター

この理論は1960年代というインターネット未発達の時代に生まれたものであるため、ネット上で「(リアル世界において)周りに製品を持っている人がいなくても」製品の評判を確認できたり、それによって爆発的に製品が普及しうるような今の環境は考慮されていないと考えられます。しかしこのようなネットの時代においては、アーリーアダプターのような「早期に製品を買った人の影響力(拡散力)」はより強くなったと言えるのではないかと個人的には思います。新製品を売る際は、「現代のアーリーアダプター」を正確に特定し、彼らにフォーカスしたマーケティング施策を考えることが大事かもしれませんね。

キャズム理論

さて、ここまでロジャーズ教授のイノベーション理論に基いて「新製品を売る際にどの層が一番重要か」という話をしてまいりましたが、実は「ハイテク製品においては、アーリーアダプターとアーリーマジョリティの間に大きな溝(キャズム)が存在するため、アーリーアダプターに製品が売れてもそこからヒットしていかない」ということが別の経営学者によって指摘されています。
次回はこの点について詳しく紹介していきたいと思います。

最初にスマホを買ったのはどんな人達?
【イノベーター理論】

shinomiyayuki

みなさんはじめまして!リニューアルした小僧ハウスのライターになりました、インフォバーン京都アルバイトのシノミーです。初回の記事ということで、まず簡単に自己紹介させていただきます。私は京都在住の大学生で、大学では「イノベーションマネジメント」、つまり革新的な製品・サービスをいかに生み出し、いかに育てていくべきかということを学んでいます。当ブログではそのような大学での学習テーマから、みなさんの仕事に役立ちそうな理論・フレームワーク等を紹介していきたいと思います。よろしくお願いいたします。

イノベーター理論

smartphone_001
突然ですが、みなさんはスマートフォンをいつ頃からお使いですか?
僕は、3年ほど前のiPhone4Sが発売された時にスマホを使い始めたのですが、その時すでに周囲の約3分の1の人がスマホを使っていました。さて、なぜこのように人によってスマホを買うタイミングが変わってくるのでしょうか?一見当たり前のように思えるこの疑問ですが、実はスマホのような(少なくとも登場時には)革新的な製品を、いつ誰が買いはじめるかというのは、ある程度理論化されているのです。それがイノベーター理論です。

イノベーター理論とは、1962年にオハイオ州立大学(論文発表当時)のエベレット・M・ロジャース教授が提唱した、革新的な新製品の普及についての理論です。彼はこの理論の中で、ある新商品を購入する人々は、購入の早い順に「5つのクラスタ」に分類できると主張しました。
diffusion_of_innovations_002
【イノベーター】 人口比2.5%
まずはじめに新製品を買う人々。冒険的。技術思考が強く、目新しさ、革新性を求めて商品を買う。
【アーリーアダプター】 人口比13.5%
流行に敏感で、情報収集を自ら行い、判断する人々。自分にとってその商品が役に立つかを自ら考え、購入に踏み切る。周りに使っている人がいるかどうかは気にしない。
【アーリーマジョリティ】 人口比34.0%
新しい様式の採用に比較的慎重な人々。確かな実用性を重視するため、先行事例を気にする。
【レイトマジョリティ】 人口比34.0%
比較的懐疑的な人々。その製品を周囲の大多数が使用していて、持っていないと不便を感じるようになると商品の購買を決意する。
【ラガード】 人口比16.0%
保守的な人々。新商品が伝統・常識といえるレベルで定着して初めて商品を買う。もしくは永久に買わない。

スマートフォンにおけるイノベーター理論

では、先ほどのスマートフォンの例に戻って考えてみます。
【イノベーター】 人口比2.5%
スマートフォンが登場。まわりに使っている人がおらず、本当に便利か確証が持てないが、斬新で面白そうなので購入。
【アーリーアダプター】 人口比13.5%
聞くところによると、スマートフォンというものがギークの間ではやっているらしい。周りに持っている人はいないが、インターネットで情報を収集して自分なりに検討したところ、どうやらこれはうまく使えば役に立ちそうだ。購入を決意。
【アーリーマジョリティ】 人口比34.0%
周囲にポツポツスマートフォン使っている人が現れてくる。彼らに話を聞くと、どうやら結構便利らしい。周りの評判もいいし、確かに便利なのだろう。購入を決意。
【レイトマジョリティ】 人口比34.0%
気がつけば周囲の人は半分以上スマートフォンを持っている。望んでスマートフォンを買いたいわけではないが、持っていないと周囲との連絡がとりにくく、生活に支障をきたすようになってきた。購入を決意。
【ラガード】 人口比16.0%
周りの人はほぼスマートフォンを持っている。が新しいものを使う気にはならない。買わない。

とこのような感じになると思います。この理論に基づいて考えると、周囲の人の3分の1くらいがスマホを使いはじめたタイミングでiPhone4Sを買った僕は、アーリーマジョリティということになりますね。

もちろん厳密にはこのようにきれいに分かれるわけではなく、製品の特性によってクラスタの分布や性質も少しずつ異なってくると思います。しかしこの理論と現在の製品の普及率などを組み合わせて使えば、次に商品を買うのはどんな人達かをざっくりと推測することができると思います。なのでwebを利用したマーケティング戦略を考える際も、売りたい製品・サービスが今どの程度普及しているかということも少し考えてみるのも面白いかもしれませんね。

Photo by Thinkstock / Getty Images